◆防災技術ラボ津波救助装置

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みじんこ総研 みじんこ

津波救助施設の例

津波救助施設は、適用する津波救助装置により、また、設置条件等に合わせて、様々な形態をとることができます。


種類 津波救助施設の例
基本型
専用施設
寄波専用施設寄波専用施設 基本となる固定式のタイプの例です。
寄波に対してのみ機能させることができる、最も基本的な施設の例です。
引波対応施設引波対応施設 寄波・引波に対応する、線対称の断面形状を持つ基本的な施設の例です。
回転型 フェンスタイプの津波救助装置の断続配置によるセーフティネットの構成方法寄波専用施設 フェンスであればほとんど設置スペースを要さず簡単に設置できますが、
線路敷等の連続した敷地がない場合、長大な施設の形成は困難であり、また、
通常の地域では、道路等により津波救助施設は分断されることになります。
こういった現実的な背景を踏まえ、断片的に配置されながら、
有効なセーフティネットを構成する、
フェンスタイプの津波救助施設の配置例を示します。
津波救助バルコニー梯子状―手摺タイプ 浸水時に回転して津波救助装置となる手摺をバルコニーに設置することで、津波等の襲来時に当該建物を津波救助施設とすることができます。
積層型 積層型構成例積層型構成例 階段状の津波救助装置を、通常の階段のように、上下方向に積層させることにより、省スペースを計ったものです。
防潮堤型 フラップゲート付設型フラップゲート付設型 フラップゲート付防潮堤に津波救助装置を設置することにより新たな効果が得られます。
防潮堤や河川の堤防に、フラップゲートと津波救助装置を組み合わせて設置することで、
安全性を維持しながら浸水した堤内の水位を即座に下げることが可能となります。
防災救助拠点防災救助拠点 津波等の水害時、陸・海・空からの強力な救助活動を展開できる防災救助拠点です。
津波の襲来時、まずは何をおいても避難することが第一ですが、避難先が安全な場所であると同時に救助活動の拠点として
機能できるものであれば、
避難・救助の双方がメリットをもたらし合うことができます。
雛壇状の敷地への設置雛壇状の敷地への設置 雛壇状の造成地に津波救助施設を設置する場合、特殊な効果を期待できます。
職住近接としつつも居住地を高台に移転する場合などに雛壇状に造成する場合がありますが、
このような地域では津波救助施設を併せて計画すると、
非常に合理的かつ機能的な構成とすることができます。
雛壇状の地盤の段差を利用するため、法面やその他のインフラ施設と用地を兼用しやすく、支持構造も簡易なもとのできます。
また、津波救助施設自体も小型のものとすることができ、経済的な構成となります。
格納式 地面格納型構成例地面格納型構成例 地面格納型・引波対応・漂流物ガード付施設構成例です。
通常時、地面に格納しておける施設の構造方法です。浮力や水流の圧力を利用して起立させることができるため、
災害による電力喪失状態でも機能させることができます。
都市部に最適な施設構成の一つであり、道路を横断する向きに配置し、起立すると上部避難路が隣接するビルに接続させる構成とすることで、
都市空間に合理的にセーフティネットを築くことができます。
建築物
利用型
広場・公開空地型広場・公開空地型 駅や広場が安全な避難先になります。
不特定多数の避難者が押しかけても安全に避難できる津波救助施設を構成できます。
津波救助マンション津波救助マンション 津波や洪水に強く、避難施設となり、浸水時には屋内外から漂着した遭難者を救出できるマンションです。
外部からの漂着のみならず、建物内部で逃げ遅れた住民をも救出できることを特徴としています。
特殊型 漂流物フィルター型漂流物フィルター型 漂着した棒状の漂流物を利用して津波救助施設を形成させる漂流物フィルタ―です。

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各種津波救助施設の解説


一方向(寄波)のみの対応型

引波が発生する津波防災用としては適用が限られますが、簡易な構造とでき、風景の大部分を透過することができます。


引波対応型

三角形の断面形状とすると、寄波・引波双方に対応でき、防潮堤のように台形の断面形状とすると、上部に避難路を設けることができるため、避難・救助に大きな効果を発揮できるようになります。


緑道や延焼防止帯、暗渠上部などの敷地を利用できる、小型の津波救助施設の例です。

小型の津波救助施設の例

一定間隔ごとに防災備蓄倉庫を設置すると、水害のみならず、総合的な防災や避難の為のネットワークを構成できます。 側面にツタを這わせると、心地よい散歩道として、また、憩いの場や交流の場として利用できる緑のトンネルとなり、都市緑化に寄与できます。常緑種であれば、延焼防止帯としての機能の向上も図ることができます。


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梯子状の津波救助装置に挟まれた合掌造りのような断面形状の構成とすることで、狭小敷地に対し、高さのある津波救助施設を構成することができます。

狭小敷地に対し大きな水深に対応する津波救助施設の例

図の構成では3階建の構成としており、各階の津波救助装置は、人が通れるクリアランスを空けてセットバックして配置されています。津波救助装置に漂着した遭難者は、このクリアランス部分から内部に入り避難します。 片面のみの構成として構造を簡略化する場合や、津波の水流に対する強度が不足する場合には、別途アンカーを取ったワイヤーにより上部を支持することもできます。

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津波救助施設の基本となる形状です。上って避難しやすく、寄せ波のみならず、引き波にも対応でき、最も効果を発揮できる形状です。用地や費用の面では有利とは言えません。

防潮堤型

施設下部や上部、デッドスペースとなる部分を別の用途に利用すると、用地を兼用でき、合理的に構成できます。基本的に線状に連続的に配置する施設であるため、道路、鉄道、歩道、暗渠、緑道、インフラ等の施設と組み合わせることができます。

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実際の防潮堤について、その海側に一定の居住地区や業務地区が存在する場合などで、津波等の越流の可能性が予想される場合は、当該防潮堤に被せるように津波救助施設を設置すると、特殊な相乗効果を発揮することができます。
防潮堤被覆型 津波は波長が数kmから数百kmと非常に長く、通常の波と異なり水流としての特色が強い為、防潮堤によりせき止められた場合、防潮堤の海側の水位は、連続的に押し寄せる波により、防潮堤が無い場合の水位より高くなることが考えられます。このため、津波の本来の高さに対して、防潮堤にはかなりの高さが必要ということになります。しかし、水位が防潮堤の高さを越え、越流を開始すると、海から押し寄せる水流が陸側にはけるため、防潮堤の外側の水位上昇は緩和されるものと考えられます。これにより、防潮堤の越流時の水位は、せき止められていた間の水位(防潮堤頂部の高さ)に比較して、それほど大きくなりにくいものと予想することができます。
津波等が防潮堤を越流した場合、防潮堤単体であれば、当該防潮堤上部にいた人は流されてしまいますが、越流深さ以上のクリアランスを設けて津波救助施設を設置した場合、当該津波救助施設は、上部の避難路までは浸水せず、構造が破壊されない限りは安全な避難施設や避難路で在り続けることができます。これにより、海岸沿いの地区の避難や漂着に備えた避難施設として、また、海岸に沿った避難路ネットワークとしての機能を提供することができます。
防潮堤が擁壁状などの場合は、通常時も含め、防潮堤の両側を行き来したり、上部に避難することも困難であるため、地域が分断されてしまいますが、津波救助施設を構成することで、どこからでもアクセス可能なものとでき、分断された二地域間を結ぶことができます。引き波の際は、水に呑まれた遭難者が海へ流出するのを防止する、最後のセーフティネットとしても機能することができます。
また、津波救助施設は、防潮堤を基礎構造とすることで、大きな構造耐力が得られ、さらに、津波救助装置は均質な格子状等の構造でもあるため、透過する水流を平準化し、局所的な強い水流による防潮堤周囲の洗掘を防止する効果も期待でき、相互に強度を補い合うことができます。

フラップゲート付防潮堤を被覆する構成例

防潮堤との組み合わせにより、さらに特別な効果を生み出すことができます。

フラップゲート付防潮堤を被覆する構成についての詳細ページへ


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防潮堤を覆った津波救助施設の一部に、津波避難ビルや避難タワーといった、二次的な避難先となる、より安全な避難施設を設けると、通常時の展望台等としての利用や、避難や救助活動についての相乗的な効果を期待できます。

以下に、防潮堤被覆型の津波救助施設の上部に設置する、通常時は展望台や港湾の監視・管理施設等として、水害時には二次的な避難先や救助活動の拠点として利用できる施設の構成例を示します。

防災救助拠点アニメーション

階段状の津波救助装置は、水害時、避難や遭難者の漂着のみならず、水流が落ち着いてくればボートなどの離着岸が容易に行え、上部避難路のネットワークにより救助活動のための陸路としても活用できます。また、防潮堤被覆型の津波救助施設は、浸水時に海側・陸側の境界となる為、双方にアクセス可能となることは、救助活動に大きな利点をもたらすものと思われます。

このため、防潮堤被覆型の津波救助施設からの二次的な避難先となり、救助活動の拠点とできる施設を併設することで、さらに効果的な避難や救助活動が可能となります。
当該施設は、津波救助施設の上部に(または津波救助施設を貫通して)設置します。防災備蓄倉庫、クレーン施設、ヘリポートを備えると、陸路、水路、空路を活用可能な強力な救助活動の拠点として機能できます。クレーン施設は、レールに沿って移動できるもとのし、倉庫内外や津波救助装置上への荷卸等が可能なものとすると、救助活動等がさらに能率よく行えます。尚、ヘリポートの床面はグレーチングとして下部に太陽光発電装置を設置すると、外部からの電力等が遮断した孤立状態でも機能できるものとなります。

防災救助拠点

防潮堤被覆型の津波救助施設と組み合わせることで、強力な防災救助拠点が構成できます。

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雛壇状の造成地への設置例

引波対応型は、雛壇状の造成地に設置する場合も特別な効果が得られます。
高低差のある段同士を跨いで漂着雛装置を設置すると、構造が一定程度簡略化され合理的に構成できますが、通常時に崖線部分をどこでも自由に行き来できるようになり、地域全体をシームレスに接続できるといった利点があります。
津波等の浸水時について、高低差の大きな地形では強い引波や流下する水流が予想されますが、津波救助施設がこの引波に対する段ごとのセーフティネットとして機能するため、大きな減災効果が期待できるものと思われます。

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梯子状等の津波救助装置を通常時は地面内に格納しておき、水害時にはウインチまたは浮力や水流の動圧で起立させる構造とすることができます。

地面への格納式施設例-解説

通常時、上部空間を利用できるため、専用の用地を確保する必要がなく、グラウンドや道路面内などを利用して設置することができます。
都市部に最適な施設構成の一つで、道路を横断する向きに設置し、起立すると上部避難路が隣接するビルに接続する構成とすることにより、都市空間に合理的なセーフティーネットを築くことができます。


●道路面内に格納しておき、水害時に起立させる津波救助施設の例

地面への格納式施設例-イラスト

道路に設置する場合、設置箇所により、道路方向に直交させる向きに配置する場合と、道路方向に沿わせた向きに配置する場合があります。道路方向に直交させる向きの配置とした場合、都市の市街地などであれば、道路両側のビルのバルコニーや屋外階段などを津波救助施設からの避難先として利用することもできます。
道路に沿わせた向きとする場合、長大な施設が簡単に構成でき、避難路のネットワークやセーフティネットが容易に築きやすいものとなります。但し、道路に沿わせた向きに配置する場合、通常時の格納スペース、水流受けが展開できるスペース、当該施設上部を避けて停車した、または流された車両が溜まるスペースの確保が必要となるため、大規模な施設を形成させる場合は相当の道路復員が必要となります。また、当該施設上部に車両が留まった場合などに備え、津波救助施設は一定の長さごとに分断し、独立して起立できる構成とします。
尚、通常時、倒伏して格納された津波救助施設の上部を、EPS等を用いて浮体とした蓋により天端を路面のレベルに揃えて覆うことで、道路交通に支障を与えず、浸水時には蓋を流出させることにより、下部の津波救助施設を露出させ、起立させることができます。

地面への格納式施設例-アニメーション

図の格納式の津波救助施設の例では、前面に漂流物ガードを備えています。
本来は、浸水前の避難時にウィンチ等により起立させ、初期の避難先として機能させることが望ましいですが、起立完了前(場合によっては浸水前)に電源喪失する可能性を考慮し、浮力や、水流受けに作用する水流の動圧による荷重やそれらによるエネルギーを利用し、受動的に起立させる構造としています。水流受けは、パラシュート状の装置とすることもでき、施設本体の起立が完了し、水流受けがスライダー端部まで移動すると、上端のリンクが外れて水流受けが倒れる機構とすることもできます。
ウィンチや水流受けを用い、平伏した状態の装置の、水流の上流側となる先端を、水平方向に移動させることにより、起立させる構造ですが、起立の初動時には、水平方向の荷重により直接鉛直方向に起立させることはできないため、施設本体中央付近に起立補助装置を設置します。起立補助装置は、浮体を設置して浮力を発生させる、エアバッグを膨張させる、ガイドや回転体を用いて水平方向の荷重や運動を鉛直方向に変換する、といった方法があります(詳細は後日記載予定です)。起立補助装置により施設中央部分を一定量上昇させた後、水平方向の荷重を作用させることにより、そのまま起立させることができます。
尚、通常時は路面内等に平伏した状態で格納しておき、洪水時に起立させて機能させる当該構造は、津波救助施設のみならず、様々な種類の防災施設に適用することができます。

尚、みじんこ総研では、この構造を利用したグラウンドの仮設構造なども提案しております。

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駅の跨線橋や複合施設の基壇部のデッキなどに適用する津波救助施設の構成例です。

広場・公開空地型-概説

公共建築物、大型の複合施設や商業施設等において、施設全体の基壇部を雛壇状のデッキテラスによる立体的な公開空地等とし、これらを大階段で接続することで、基壇部分全体をオープンでアクセスしやすいものとできますが、この階段部分を津波救助装置とすることにより、津波等の水害時に合理的に対応できる津波救助施設を構成できます。津波救助装置は透かし階段状とすることができるため、光や風を透過させることができ、基壇部の津波救助装置下部もパブリックスペースや商業スペース等に有効に利用できるものとなります。このとき、雨仕舞を工夫すると、雨に濡れず、便利に活用できます。
これらにより、外部からの訪問者にオープンな、賑わいのある、または、収益性の高い基壇部分を提供することができます。

この施設構成は、鉄道線路に分断された地域間の行き来を活性化する、大型駅の連絡デッキなどにも親和性が高いものと考えます。

水害からの避難時については、一般に、都市部の津波避難ビルは、とりわけ地域外からの訪問者にとって、存在や位置を把握・認識するのが難しくなる可能性があり、当該ビルにたどり着いても、建物の入り口や、内部の階段へのアクセス経路を見つける事が容易とは限らず、また、避難者が集中した場合、上階に向かう階段で滞留してしまい、避難が遅れる可能性が考えられます。 これに対し、当該津波救助施設は、大規模であり、大階段が印象付けられているため、迷うことなく到達でき、そのまま上って避難することができます。また、大人数が一度に押し寄せてもスムーズかつ安全にテラス上に避難できます。
さらに、一旦雛壇状のテラス部分に避難し、そこから時間をかけてビルの内部に入り上階に避難できるため、水位の上昇に対して余裕のある、段階的で安全な避難が可能となります。
当該施設への避難時は、他の津波救助施設同様、水流の上流側からの当該施設への避難であれば、避難の最中に水流に呑まれても、そのまま当該施設に漂着して避難を再開できるため、都市のセーフティネット(津波救助装置の概要にて解説しています)の一部として機能することができます。
尚、基壇部から突き出るビルの部分は、水流の方向に対して45度に振った配置とすると、水流の抵抗を小さくできるとともに、漂着した遭難者を左右の津波救助装置に誘導することができます。

大規模施設の公開空地等への適用例1

大規模施設の公開空地等への適用例2

駅の歩行者用デッキなどの広場を津波救助施設にした施設例です。
密集した都市部にも安全な避難方法を提供します。

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建築物そのものを津波救助施設とすることで、外部からの漂着者のみならず、自宅で逃げ遅れた居住者も即座に救出することが可能となります。

津波救助施設ビル

図のように、建築物の、水流の上流側および下流側のバルコニーや共用廊下を、各階の階高全長にわたる梯子状の津波救助装置で覆うことにより、上流側の地域から漂着した遭難者のみならず、屋内で逃げ遅れて水流に呑まれた遭難者も直ちに救助可能な施設を構成できます。
共用廊下となる側は、梯子状の津波救助装置の代わりに、前出の、積層した階段状の津波救助施設を設置すると、通常時の共用階段を兼用することができます。
尚、左図のバルコニー側(上流側)の津波救助装置は、落下防止の手摺兼ルーバーとして機能し、側面の出入り口により火災時等の避難や消防隊の進入にも対応できるものです。

住宅のみならず、病院その他、自力での避難が困難な入所者の方が多い社会福祉施設や高齢者介護施設等に適用すると、職員の方の介助による避難が万一遅れた場合でもセーフティネットが機能するため、水害に対する安全度の高い施設を形成することができます。


津波救助マンション前面

固定式の津波救助装置に代えて、回転式の手摺やフェンス状の津波救助装置を適用し、建築物全体を、段状にセットバックする、デザイン性に富んだ形状とすることも可能です。


津波救助マンション断面

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浸水時に手摺やフェンス、壁、サッシ、ドア等を回転または流出させる機構については、防災技術ラボの「津波対応建築物」(ページ作成中)または「受け流し構造」のページをご参照下さい。


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回転型の津波救助装置によるセーフティネットの形成



フェンスタイプの津波救助装置の断続配置例

フェンスであればほとんど設置スペースを要さず簡単に設置できますが、線路敷等の連続した敷地がない場合、長大な施設の形成は困難であり、また、通常の地域では、道路等により津波救助施設は分断されることになります。
さらには、津波等の襲来時には大量の漂流物が発生するため、漂着した遭難者の漂流物に対する安全確保も必要となります。
こういった現実的な背景を踏まえ、断片的に配置されながら、有効なセーフティネットを構成する、フェンスタイプの津波救助施設の配置例を示します。

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バルコニーの手すりやルーバーによる津波救助施設の例-アニメーション

建築物のバルコニーの手摺などを津波救助装置とし、建築物自体で津波救助施設を構成することができます。

集合住宅などにおいて、水流の上流側となるバルコニーや共用廊下の外部側上部にルーバーを設置し、当該ルーバーやその下部の手摺を、浸水時に回転する「受け流し構造」による機構により支持することで、水害による浸水時に、これらを回転させて梯子状の津波救助装置を形成させることができます。これにより、浸水時に、当該建築物に漂着した遭難者が、水没した、または、水没中の階の天井付近に潜り込むのを防止でき(※)、水面付近での漂着であれば、この遭難者を水面に上昇させ、さらに上階に避難させることが可能となります。
※天井付近は梁や垂壁等が多く水平移動が困難な為、水没した階の天井付近は大変危険になるものと思われます。

バルコニーの手すりやルーバーによる津波救助施設の例-日射調整

通常時、手摺は落下防止の機能を果たしますが、ルーバーは光熱環境やプライバシーの向上に寄与するものとなります。 ルーバーは、予め傾斜面を成した状態で固定されたものとすると、浸水直後から遭難者の漂着に対応できて好ましいですが、上階の手摺の下部を延長し、手摺と一体のものとして、浸水時に回転して傾斜面を構成するものとすることもできます。

バルコニーの手すりやルーバーによる津波救助施設の例-手摺詳細

手摺やルーバーは、浸水時に回転すると、縦桟の部分が遭難者を上昇させる為の傾斜前面を成し、ルーバーの羽板の回転軸や手摺の横桟が、水面に到達した遭難者が上方に上る為の手掛かりや足掛りとなり、津波救助装置として機能できるようになります。 尚、ルーバーは羽板を回転可能なものとすることにより、通常時、日射や視線を自在にコントロールでき、住環境を向上させます。 また、ルーバーや手摺をツタ等により緑化すると、さらに光熱環境や快適性の向上が期待できますが、この場合、ツタが可動部分を拘束しないよう手入れすることが必要となります。

バルコニーの手すりやルーバーによる津波救助施設の例-浸水時アニメーション

浸水してブリーズソレイユや手摺が回転すると、梯子状の津波救助装置が形成され、漂着した遭難者はこれを上り、さらに上階への避難はしご(※)を上り安全な階まで避難します。
※バルコニーに設置する避難はしごは、津波からの避難に対応した、下階から操作できるタイプのものとします。

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津波救助施設とした建築物を適切に配置することで、都市全体に、比較的容易に、人命のセーフティネットを形成できます。

建築物型(配置計画)

津波救助施設は、建築物型のように、連続した形状とすることが難しい場合でも、上図のように雁行配置とし、予想される水流の方向(黄色の矢印)に対し、それぞれが互いにオーバーラップするよう配置することで、漂流者がいずれかの津波救助施設に漂着可能なセーフティネットを計画できます。
また、津波救助施設とせずに、建物の前面を水平ルーバーや手摺等の横桟で覆い、建物自体を水流の方向に対し斜めに配置し、漂着した漂流者を、異なる津波救助施設に、水平方向に誘導する計画とすることもできます。上図での青い部分は、このように水平方向に誘導する部分、赤い部分は津波救助装置を表しています。①の津波救助施設には、水流手前両側の青い前面の建物に漂着した遭難者が誘導されて漂着します。
また、②のように、単独の建築物の一部にのみ津波救助装置を設置する構成とすることもできます。
尚、津波救助施設は、上記手摺型のように、建築物をセットバックさせず鉛直上下方向に構成することも可能ですが、浸水深が大きい場合、漂着した遭難者を深い位置から水面まで誘導できなくなるため、極力セットバックさせる構成とします。建築物はセットバックさせると、限られた床面積を効率良く使いきれない為、③で示された施設のように、建築物を水流の方向に斜めに配置し、建築物前面に平行に上がっていく津波救助装置を上下に連続して配置することもできます。大型の商業施設などは、外部の避難階段と兼用して計画することができます。


漂流物フィルター型

漂流物フィルターでありながら、捕捉した漂流物を用いて津波救助装置を形成するものです。

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その他、施設構成に関する詳細情報は、施設構成例のページに掲載しております。

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一般の階段のように、階段状の津波救助装置を上下に積層することにより、省スペース化を図りながら、大きな浸水深に対応することができる津波救助施設を構成できる例です。

積層型の施設例

津波救助施設は、積層した構成とすることにより、省スペース化することができます。 図の施設の例では、複数階に分割しており、避難時は前面に回り込むことを繰り返しながら階段部分を上って上方に避難します。浸水時、漂着した遭難者が、いずれかの部分の、階段状の津波救助装置に漂着しますが、漂着した階段状の津波救助装置の範囲内(階高内)で水面に到達しなかった場合、背後のフェンス部分の、梯子状の津波救助装置により、さらに上昇させ、水面に到達させて救出し、さらなる避難ができる構成としています。通常時は屋外階段や観覧の為の施設等に利用することができます。
この積層型の津波救助施設は、直階段を積層した構成であるため、回り込んで施設前面に移動するための渡り廊下を設けています。
尚、施設の上流側廊下部分前面の手摺は、浸水時に倒伏する構造(詳細は各種構造例にて説明する予定です)である為、水中にて当該施設に漂着した遭難者の津波救助装置部分への漂流を妨げません。

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高速道路など高架施設の下部空間を利用し、高架施設上を上部避難路として利用できる津波救助施設の例です。

積層型-高架施設下部の設置施設例

この例では、積層型の津波救助施設を高架施設の下部に納め、敷地や上部避難路を当該高架施設と共用しています。
津波救助施設の部分は市街地付近のみの設置とし、その他の範囲には設置しない場合であっても、上部避難路による避難路のネットワークは利用することができるため、最小限の合理的な構成とすることができます。

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網状の津波救助施設は、既述の格納式の津波救助施設同様、通常時は道路面内に格納しておき、水害時に起立させて津波救助施設を構成することができます。(網状の津波救助装置の構造詳細は各種構造例参照・作成中)。

建築物間の網状の津波救助施設の例

網状の津波救助装置は、通常時は路面に埋設した函等に格納しておき、洪水の襲来時にはウィンチ等を用いて側端のガイドレールに沿って展開させる構成などとすることができます。ビル間に計画することにより、通常時に都市の交通を分断せず、津波救助施設やセーフティネットを容易に形成できます。この場合、ビルの側面にガイドレールを設置すると、専用の架構が不要となり、合理的です。

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網状の津波救助装置は、浸水時に流されにくい樹木により構成された鎮守の森や緑地帯などに設置すると、樹木を、当該津波救助施設のための支持架構や漂流物フィルターなど、強度の必要な構造物として利用できます。

緑地帯に設置する網状の津波救助施設の例

上流側の樹木には、漂流物フィルターとしての機能も期待できます。
通常時は遊び場としておくと、日頃より当該施設に親しんでおくことができ、災害時にスムーズな避難が可能となります。この場合、避難所を兼ねて、樹上に避難デッキやツリーハウスを設置するのも良いでしょう。

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津波救助施設は、上述のように、敷地等の条件に合わせて様々な形態を採ることができますが、これらを地域全体で計画的に配置することで、避難路ネットワークや人命のセーフティネットを構成でき、効果的に機能を発揮できるようになります。このため、津波救助施設は、都市計画や地域防災計画等に組み入れて検討することが肝要となります。

地域全体における配置計画の例

配置計画についての詳細は、津波救助装置のページを参照ください。

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記事準備中です。順次掲載していく予定です。

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