◆防災技術ラボ

高齢者や身障者の避難や救助のための引き上げ装置

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みじんこ総研 みじんこ



津波の襲来などの非常時に、高齢者や身体障害者の方等を避難所などの上部に引き上げることができる装置です。
介助者による手伝いまたは錘を落下させることにより引き上げるため、電源喪失状態でも機能させることができます。

尚、ここで紹介する引き上げ機構では、基本的に、滑車は、従来の避難器具や登山用具に用いられるような、ブレーキ機構(遠心ブレーキ等の調速機構)と、一方向にのみにケーブルを送り出す爪付のプーリーの機構を用い、休憩などにより引き上げ作業を中断した際の被介助者の下降や介助者の転落を防止し、また、錘等による引き上げの速度が過剰にならないようにします。


階段の手すりを用いた引上げ避難装置

レールとして機能させることができる手摺と、滑車やケーブル、簡易ハーネスにより構成される引き上げ避難装置です。

階段の手すりを用いた引上げ避難装置

レールとして使用する手摺は、通常時、バリアフリー対応の二段式の手摺として利用できます。避難時は回転して展開させることで、レールとして機能させることができます。

※簡易ハーネスやケーブルは、当該階段の踊り場などの、通常時に邪魔にならず、見つけやすい場所に格納しておく必要があります。
尚、レールとなる手摺に代えて、階段用カート(3本セットになったタイヤを持ち段を乗り越えられるカート)や、曲げべニア等によるそりなどを常備しておく、という方法も考えられます。


引き上げ能力

一般に、人力で重量物を牽引するのは困難ですが、その理由は、通常、牽引する足元のグリップを十分に確保できないことと、主に腕力による牽引となる為ではないかと思います。

階段での牽引であれば、段に足を掛けることができるため、摩擦によるグリップは不要となります。また、胴や腰に回す簡易ハーネスであれば、足腰の力をそのままケーブルに伝達できます。
さらに、当該構成では、滑車を用いており、作業者は下向きに牽引できるため、自身の体重を利用して牽引することができます。
これらにより、下図のように、階段に平行に近づくまで体を倒して牽引することも可能となるため、結果、非常に大きな牽引力を得られることになります。

引き上げ能力

被介助者の体重をW1、介助者の体重をW2とすると、介助者が図のように極端に体を倒して牽引している場合、介助者の足腰にかかる力はN、介助者が発生させる牽引力はT2となります(矢印の長さが力の大きさに比例します)。

被介助者の引き上げに必要な力は、被介助者の体重と手摺の勾配により、T1となりますが、図のように、介助者の牽引力T2の方が圧倒的に大きく、手摺と被介助者のお尻の間に発生する摩擦力を差し引いても余裕で引き上げられることになります。逆に、介助者はここまで体を傾斜させて牽引する必要はないわけですが、被介助者の体重が大きい場合であっても、引き上げは困難ではないと言えます。

尚、滑車の構成により、倍力システム(テコのように力を大きくする方法)を構成することも可能ですが、階段での引き上げ装置であれば、上記により不要であるものと思われます。

さらに、滑車に逆送り防止機構を具備させ、介助者のハーネス付近にもケーブルのたるみを取る爪付きのガイド機構を具備させることにより、介助者が階段上部での上り下りを細かく繰り返すことにより、被介助者を引き上げることができるようになります。これにより、浸水が迫っている状況など、介助者にも危険が迫っている場合にも、介助者の安全を確保しながら作業ができます。


公園等の階段の手摺

公園の階段に設置されている手摺などは、既にそのまま人が座ることができそうな形状のものもあり、立地条件によっては、高台への引き上げ避難用のレールとして活用できるかもしれません。

公園等の階段の手摺

座って準備ができそうな平場付きのものまで見かけます。こっそり座って滑って遊んだ方もおられるかもしれませんが、そのままでは座面の空隙が大きすぎると思われますので、1,2本、縦方向のパイプを追加すると丁度良さそうです。


その他の傾斜面での引上げ避難装置

梯子など、階段以外の部分での引き上げについては、被介助者の体重が介助者の体重より大きい場合、倍力装置の利用や、介助者が、当該施設上部に常備させたウェイトを背負って下降する、といった対応が考えられます。

その他の傾斜面での引上げ避難装置


錘を用いた引上げ避難装置

被介助者が、自身で簡易ハーネスを装着し、ケーブルを引き錘を落下させることで引き上げられる、自助式の引き上げシステムです。


錘を用いた自助式引上げ避難装置のアニメーション

錘を用いた自助式引上げ避難装置のアニメーション(解説)


特殊なフックとガバナー(調速装置)を有する滑車を用いた引き上げシステムです。
津波避難タワーや津波避難ビル等に、対象地域の、当該システムを利用する要介助者の人数分を、あらかじめセットしておき、津波の襲来時には被介助者がこれを用いて自助的に避難できるようにしたものです。


「津波てんでんこ」

津波の襲来時には他人の事を構わず各々即刻避難すべし、といった意味だそうですが、被災の恐れがある地域に介助を必要とする人も居住しているわけですから、電源喪失時にも被介助者が自助的に避難できる方法を確保しておくことは、非常に大切であると考えます。


構造の説明

錘を用いた自助式引上げ避難装置 説明図 錘を用いた自助式引上げ避難装置 構造詳細アニメーション

この引き上げ避難システムは、ガバナー(調速機)付プーリ―および開放機構を備えたフックを介し、一方には簡易ハーネスを、他方にはおもりを接続させています。

通常時、フックはおもりを支持していますが、救護対象者がハーネスを装着してケーブルを引くと、ケーブルに接続された解除ブロックがフックの爪部分の保持ユニットを回転させ、爪部分を開放します。これにより、フックは保持していたおもりを落下させ、ケーブルを介して救護対象者を引き上げます。

フックはおもりを落下させるのと同時にケーブルを通すガイド部分を狭めてケーブルの通過の抵抗を高めブレーキを掛けます。また、滑車は遠心ブレーキ等のガバナー(調速機)機構を具備するため、一定以上のスピードでケーブルが通過すると、ブレーキがかかり、救護対象者は安全なスピードで引き上げられます。

おもりの脱落などの予期しないトラブルへに備えるため、プーリーに逆回転防止の爪を具備させると、安全性を向上させることができます。


その他の適用

このページで示した引き上げ方法は、レスキューなどの場面にも応用可能と考えております。
山岳レスキューであれば、簡易ハーネスをセットしたロープを崖下の救護対象者に落として装着させ、ロープバッグに現場にある石などを詰めてウェイトとし、レスキュー隊員の腕力ではなく当該ウェイトを落下させることにより救護対象者を引き上げさせる、または、ウェイトをセットした状態で隊員が崖を降りて救護対象者を背負い、崖下からの操作で当該ウェイトを落下させることで、隊員自身と救護対象者を引き上げさせる、といった方法により、これまでは困難とされてきた状況での引き上げ救助活動が容易になるものと考えております。

また、みじんこ総研では、「電柱によるグリッド避難システム」という避難方法を提案しております。(詳細ページ作成中)
津波からの避難の最終手段としての、電柱・架線利用の提案です。
電柱上部の重量物(変圧器等も利用できるかもしれません)を、引上げ用のウェイトとして利用し、電柱下部で簡易ハーネスを装着した避難者を引き上げるものです。
通電を確実に止めることが肝要ですが、安全な避難が間に合わない場合の最終手段として、有効な方法ではないかと考えております。また、電柱を支持するケーブル等は、条件により、電柱間を渡っての横移動による避難に利用することができます。
この方法では、電柱のみならず、信号機や大型の道路案内標識、歩道橋、その他、一定の高さのある構造物や根張の良い樹木等も利用することができます。
信号機の場合、本体は、古い型のものであれば重量が非常に大きい為、落下させるウェイトとして利用できそうですが、LED化したものであれば重量が不足するため、信号機の他の部材も含めて落下させる等の方法の検討が必要となります。

電柱への引き上げ避難システム

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