一方向流について


一方向流とは?

 簡単に言うと、ざっくり一方通行となる気流のことです。

 通常、空調や換気による気流は、粘性や摩擦が引き起こす渦状の乱流を発生させます。また、空調換気による気流の流速が小さい場合も、対流等の要因が支配的となる部分では、当該気流とは大きく異なる方向の気流を生じます。これに対し、摩擦の小さな平滑な内面を持つダクト内を低速で流れる気流などは、流体全体がほとんど乱れずに単純に平行移動するような流れ(層流)となります。
 従来の、クリーンルームに用いられる置換空調の場合、天井から床に平行に空気を移動させるように換気するため、全体が層流となり、局所的に乱流が発生しても、巨視的には確実に換気することができます。このような流れを一方向流といいます。
 一方向流は、完全に平行する気流に限らず、放射方向や、屈曲する流れとすることもできます。


一方向流いろいろ

一方向流は、鉛直・水平・斜め・放射方向や、屈曲など、色々計画できます!

感染防止のための一方向流のバリエーション 水平、放射方向

置換空調や局所排気も一方向流

 サーバールーム、手術室、クリーンルームに用いられる置換空調・換気システムや、キッチン・ドラフトチャンバーに用いられる局所排気システムも、一方向流を形成し、利用しています。
 これらでは、室内で排出した空気や熱をごっそり排気し、また、逆流による汚染を防止します。

サーバールームや手術室、クリーンルームの置換空調や、キッチン、ドラフトチャンバーの局所排気も一方向流を作り出します

気流の性質と気流アレンジメント


気流の性質

 気流は、同じ風量であっても、吹出口(給気口)周囲と吸込口(排気口)周囲とで性質が異なります。

 顔の前方に、限界まで手を伸ばし、口をすぼめて息を吹きかけると、風が届くのが感じられると思います。
ところが、そのまま息を吸い込んでみても、今度は全く風が感じられないでしょう。
息を吹く場合、陽圧(空調では正圧といいます)といって、周囲より高圧で吹き出しますが、この吐いた息は、噴流(ジェット)を形成します。噴流には直進性があり、少しずつ拡散しながらも、遠くまで到達します。

 これに対し、吸い込む息には噴流が発生しないため(正確には口内に対して噴流が発生しますが)、口の周りの空気は、およそ距離に応じた圧力分布となります。同一の風速となる位置を結ぶと、およそ口を覆う球体を形成するものと考えられます。言い換えると、およそ全ての方向に対し均等な気流となるため、吹出による、線形に集中した噴流と比較すると、気流の影響を強く受ける距離自体は小さくなります。

 このように、吹き出しの気流は噴流となり、排気や還気の吸い込みの気流は、吸い込み口に対し、およそ均質な放射状(または竜巻状)の気流を形成しますが、どちらも一方向流を形成します。

 これらの性質をふまえて、吹出口と吸込口を適切に配置し、一方向流の形成を図ります。

吹出口(給気口)周囲と吸込口(排気口)周囲とでは、気流の性質が異なります。噴流と到達距離、一方向流の範囲

※空調用語では、吹出口から、風速が秒速20㎝になる位置までの距離を、「到達距離」と言います


吹出気流

 通常、空調済空気は、吹出口で風速を大きくした噴流(ジェット)により室内隅々まで行き渡るように設計されます。
噴流には直進性があり、遠方まで到達することができます。同時に、直進しつつも、周囲に少しずつ空気を拡散させます。
このため、吹出空気が感染者の呼気にあたると、感染した汚染空気を周囲に拡散させてしまいます。

噴流等により汚染空気の拡散が予想される場合は、以下のような対策をします。

  1. 吹出空気の流速を抑制し、噴流を消滅させる。
  2.  風量は確保しつつ制気口のサイズを拡大したり防風板を設けることにより、噴流を打ち消すことができます。
    この場合、誘導板を設置したり、制気口(吹出口・吸込口)の位置を変更するなどして、感染防止を図る気流が必要な位置に(在室者周囲に)形成されるようにします。
    これにより、吹出口から吸込口への滑らかな安定した一方向流を形成でき、汚染空気を安全に排出できます。

  3. 換気量を大きく確保し、ウィルスのエアロゾルの濃度を抑制する。
  4.  これまでのコロナウィルスの感染拡大・抑制の経緯を鑑みると、ある程度希釈されたエアロゾルにはそれほど感染力はないものとみて良いのではないかと思います。このため、換気による感染防止方法と、気流アレンジメントによる感染防止方法を組み合わせることで、無理なく合理的に感染防止が図れるのではないかと思います。

 ※気流は、冷暖房時の空調空気の比重により形成させることも可能です。この場合、暖房時と冷房時で気流の向きを入れ替える設計とすると、合理的に計画しやすいかと思われます。


吸込気流

 従来、噴流として計画される吹出の気流に対して、吸込の気流の場合、指向性が無く、影響範囲はとても小さいですが、吸込口からの距離の2乗に反比例した風速の気流を発生させます。
吸込口から一定の範囲内では、この吸込気流の風速が対流や拡散の風速を上回り、確実な一方向流を形成し、その範囲内の汚染空気は確実に排出できるものと考えられます。(キッチンのレンジフードによる局所排気も同様)

 しかしながら、局所排気は安定した一方向流を形成して逆流させず確実に排気できる範囲が限定的であるため、吹出口から当該吸込口まで、安定した一方向流となる滑らかな気流を形成させることが肝要となります。


気流アレンジメント

 吹出(給気)・吸込(排気)それぞれの気流の性質を理解し、吹出口から在室者周囲を通過し吸込口へ到達する、連続的でスムーズな流れを誘導し、乱れにくい一方向流を形成させます。

吹出口(給気口)周囲と吸込口(排気口)周囲の気流の性質を把握します。

 気流アレンジメントは、こういった一方向流を形成させ、在室者の配置と組み合わせることにより、汚染空気の拡散および感染拡大の防止を図るものです。




一方向流の形成と気流アレンジメントの計画方法の詳細は、「一方向流による感染防止~気流アレンジメント」のページを参照下さい。

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